虹が掛かっている。
虹の上に秦野くんと晴子さんが座っている。
晴子は弁当を自分の右隣りに広げて、時折聞こえてくるスピーカー越しの念仏のような唱和に耳を傾けていた。どこからか微かに音叉の鳴るような持続音も聞こえてくる。晴子は弁当箱からおにぎりを二つ、慎重に取り出す。弁当箱の幅より、虹の幅の方が狭いのだ。弁当箱は平均台のようなその虹の上で、何とかバランスを保って置かれている。
おにぎりをひとつ、両手で秦野くんに手渡して、二秒で晴子は弁当箱に両手を移し、押さえる。
虹の真ん中が凹んで、窪みが出来てしまった。
食事を終えた二人は、虹の下まで二人で降りて、それぞれの家路についた。